歴史的快挙:アイルランドが化石燃料からの完全撤退を議会決議!
ビル・マッキベン – 350.org創設者
みなさま
アイルランド政府が世界で初めての化石燃料関連会社からの完全なダイベストメントを議会決議し、嬉しさのあまり祝杯のギネスビール片手に書きしたためています。
アイルランド議会最大の力を持つ下院を通過したため、残るは上院での判を待つのみです。アイルランド有する80億ユーロにも及ぶ政府系ファンドが、石油・石炭・ガスからの全資産放棄を開始します。
アイルランドの地で活躍する活動家たちは驚くべき成果を成し遂げ、環境団体の活動家、またカトリックの社会的公正運動がこのような素晴らしい国家的決断へ導いた功績に、畏敬の念を抱くばかりです。
しかし、彼らが特別な存在だったから成し得れたのでは決してありません。ひとりひとりが小さな行動を積み重ね、各国でダイベストメント運動の一員として動くことで、彼らと同じようにこのような結果をもたらすことができます。皆がひとつになって立ち上がることが大切なのです。
アイルランド国会議事堂
これからも吉報は続きそうです。
2018年はニューヨーク市に始まって、各地の大学・世界各国の都市がダイベストメントし、大きな成果を収め続けました。ちょうど昨日には、ケンブリッジ大学のクイーンズ・カレッジがダイベストメントを決定。数日前にはイギリス国教会が、「2023年までにパリ協定に即さない場合、化石燃料関連会社から資金をダイベストする」と(実行はされないとは思いますが)揺さぶりをかけました。
ヨーロッパ最大のエネルギーグループのシェル社は先月の年次報告書で、ダイベストメントの運動が事業に重大なリスクを及ぼすようになったことを公の場で認め、また昨日には、エネルギー経済研究所と財務分析研究所の友人たちが、石油関連会社への投資は将来性がないことを示すレポートを提出。これは大学や教会・市が化石燃料から撤退するために尽力している人々の大きな手助けとなるでしょう。
今、トランプ大統領はアメリカだけでなく、他国も道連れに時代に逆行しようとしている悲惨な状態です。そんな中だからこそ、勝利を盛大に祝う必要があるのです。私たちは明るい未来・ビジョンのために戦い、そして今、我々は勝利をつかんでいます!
いや〜今日はギネスが本当においしいです!
ビル・マッキベン
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草の根活動家のためのツール会議
「草の根活動家のためのツール会議」とは?
パタゴニアは自然を擁護するより効果的な活動家となるにはどうしたらいいかを伝授してもらうために、1994年にアメリカにて第一回目の「草の根活動家のためのツール会議」を発足しました。メンバーを魅了し、問題を伝え、支援者とコミュニケーションをとり、人びとが行動を起こすきっかけとなるなど、環境保護活動家が必要とするツールは、基本的にパタゴニアで商品を販売するツールと非常によく似ています。そのツールを日本で散布し、活かすために今年も日本全国からより持続可能な社会を実現するために活動している「アクティビスト」「写真家」「ソーシャルデザイン専門家」等、が集まって第6回を行いました。
第6回目:気候変動編
緑に溢れている山梨県の大自然に囲まれ、参加者は今回の主要テーマの気候変動問題の解決について各々の情熱とアイディアと悩みを親しく話し合いました。一般社団法人ソーラーシェアリング推進連盟や認定NPO法人気候ネットワークから写真家やパタゴニア・スキーアンバサダーまで種々な専門家・プロが集い、それぞれの経験・ストーリーを聞かせて頂きました。日本ではいろんな活動があるので、ここでいくつかを紹介致します!
紹介① 日本初の自然エネルギー100%大学
千葉商科大学は地球温暖化対策などの環境保護の貢献するために、2017年11月に「日本初の自然エネルギー100%大学」を目指すことを宣言しました。大学所有地にメガソーラー野田発電所を建設し、2016には一般家庭約800世帯が一年間に使う電気量を相当する量を発電しました。日本全国の大学が次々と100REを宣言して頂くように,学生はこの活動に注目!詳しくは:http://www.cuc.ac.jp/news/2018/index.html
紹介② パタゴニア スキー アンバサダー
大池拓磨さんはプロスキーヤーとして世界中で活躍されてます。大池さんは世界中の雪原を訪ねて、降雪量や季節の期間と変わり目の日のズレなどの地球温暖化の影響を直接感じています。降雪量や季節の期間と変わり目の日のズレ都会に住んでいる私たちは最も気候変動のインパクトを受けている人の状況を理解する必要があると深く実感しました。現在、大池さんは長野県の白馬村に住み、JFO(Japan Freeride Open)を運営する重要なメンバーでありながら、今後計画しているサステナブルリゾートの先駆けをしています。
大池さんのトラベルをこちらから楽しめます:https://www.instagram.com/takuma84.ooike/
3日間の学び
みなさんはもうご存じだと思いますが、気候変動はかなり複雑な問題であります。一つの石炭火力発電所だけ見ても住民から政治家まで多くの人々が関わり、影響を受けるのは人間に限らない。
会議では、現在日本各地で建設が計画されている35基の石炭火力発電所を中止させる目標を一つの例として掲げ、問題解決には戦略と戦術をよく考える必要があると学びました。
戦略を作るにはまず、求めている変化を起こせる「意思決定者」をはっきりさせること。その決定者にロジックを伝える「話題・理論」を影響できる方を確かめること。そして、最後に問題の「構造」に影響を及ぼす要素・柱は何かを考える必要があります。戦略をしっかり立ててから、その次は適切な「戦術」について考えられる。戦術のなかで非常に重要なのが、問題解決に向けて誰をどのような手法で行動に導くのか。ロジックが正しくても、最終的に人を動かせるのは「頭」ではなく、「心」です。それは重要なポイントと私は強く感じました。
私たち、350Japanはどうやって学ばせて頂いた「ツール」を上手く「レッツ、ダイベスト!」キャンペーンに活かせるのかについて7月14日(土)の下半期作戦会議にてみなさまと共有しますので、参加可能の方は以下のリンクからサインアップしてください!https://goo.gl/forms/Ai4rxqwqi2Ayih6J3
(お問い合わせはスタッフの日南子まで:[email protected])
作者について
ヤッホー!初めまして、私は350.org Japanチームに新しく入ってきたジュニア・キャンペーナーのベサント光太郎と申します。大学で自然科学を勉強していた時に350オーストラリアが展開していたキャンパス・ダイベスト・キャンペーンに参加しました。そのきっかけで350.orgと初めて縁を結びました。オーストラリアの首都キャンベラにあるコミュニティー青少年団体で6年間勤めて、2016年に日本に帰国しました僕は微笑みながらみなさまと一緒に環境を守るために努力をさせて頂きます(^^)!…
「化石燃料ダイベストメントの勢いは止まらない」350.org共同創設者、環境ジャーナリスト ビル・マッキベンが来日
米国のトランプ大統領が気候変動に関する「パリ協定」を脱退する方針を表明したのが、1年前の今日です。幸いにその表明は、米国全土そして世界において自治体、企業、市民団体からの気候変動対策に対するコミットメントや行動をむしろ促進する起爆剤となりました。
昨年のトランプ大統領のパリ協定離脱の発表を受け、
在日米国大使館前で行った緊急アクション
今では、ニューヨークやロンドンのような世界の大都市、大学、年金基金や政府系ファンドが、化石燃料からのダイベストメント(投資撤退)をどんどん推し進めています。ニューヨーク市に至っては、5大石油会社に対して気候変動による被害の責任を追求する訴訟を起こしていて、パリ市も同様のことを検討をしています。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が出した最新の報告書では、2020年には再生可能エネルギー発電コストが化石燃料火力発電コストを下回ると示しています。
先月、この脱炭素化の動きを米国で後押ししている350.org共同創設者、環境ジャーナリストのビル・マッキベンが「脱化石燃料」の重要性を訴えるアジア太平洋講演ツアーの一環で来日しました。日本に滞在している間、ビルは世界の脱炭素化の潮流、特に化石燃料ダイベストメントのムーブメントについて様々な場で語りました。
同時に、日本で新規の石炭火力発電所の建設が40基も計画されていることや、日本の3大メガバンク(三菱UFJ、みずほ、三井住友)が石炭火力発電事業に巨額の融資を行っている現状について知り、メガバンクに対して石炭関連企業への新規融資停止を求める国際署名への参加を呼びかけました。
5月10日に東京で開催されたセミナーの様子
大きな公開イベントは東京と横浜で行われ、その一つは銀行口座をダイベストメントした横浜市戸塚区の善了寺の本堂で開催されました。ビルは、気候変動というどれほど大きな危機に私たちが瀕していて、それを解決するには一人で行動するのではなく、共に行動し最大の変革をもたらすことが大事なのだということを来日中一貫して訴え続けました。
5月11日に横浜市の善了寺で行われたイベント
来日を終えたビルから日本の皆様へのメッセージをご紹介します。
「今回の日本訪問は、私にとって特別な経験でした。世界第3位の経済大国において、どのような活動が展開されていて、それがどのような進歩をもたらしているのかを目の当たりできました。350.org Japanは本当に日本で「ダイベストメント」というアクションを根付かせているのだなと感じました。「ダイベストメント」がどれほど不可欠で理にかなったアクションなのかを証明することが、日本の石炭からの脱却を促す鍵だと私は考えています。私は日本での経験について書いたり話したりすることを通じて、世界に日本に関する情報を届けるという役割を果たすつもりです。 コンセンサスと秩序を大切にする日本社会において、アクションや行動をとるというのはなかなか難しいかもしれません。しかし、コンセンサスが大事であるからこそ、日本が動くときには大規模な変化が急速にもたらされるのではないかと私は信じています。近い将来に、皆さんをもう一度お会いすることを楽しみにしています!」
ビルが来日している間、大手生命保険会社の第一生命が海外石炭火力発電への新規融資を中止することを宣言しました。そして先日、メガバンクの三井住友と三菱UFJの社長が石炭火力発電に対する融資方針を厳格化していくという発言をしたと報じられています。日本でも少しずつダイベストメントの兆しが見えてきたと言えると思います。しかし、気候変動による深刻な影響を避けるためには、私たちは石炭への支援の「厳格化」だけでなく、完全の撤退を求めてメガバンクへの働きかけを継続的に行う必要があります。
350.org Japanとして皆様の声をメガバンクに届けることで、このような変革を促していきます。
3大メガバンクの株主総会が開催される6月下旬までに1万人の署名を集めています。日本の銀行が石炭の問題に敏感になっている今こそ、一人でも多くの署名を銀行に届けることが重要になってきます。きれいな青空、そして安全な気候を守るために、ぜひ3大メガバンクに石炭火力発電や石炭採掘事業への新規融資停止を求める署名にご協力ください!詳しくは署名ページからご覧ください:http://world.350.org/ja/divest_from_coal_ja/
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インドネシアで小エビが取れなくなってしまっている!?
既設の石炭火力発電所の影響で、住民は漁業や農業など生計手段への影響、および健康被害に直面しています。
私たちの税金や預貯金を活用し日本政府や民間銀行がこのような問題を及ぼしている事業に巨額な支援を行っているケースはインドネシアに多数あります。
チレボン石炭火力発電所を覆う黒い雲。西ジャワ州チレボン県アスタナジャプラ郡カンチ村から。
撮影:アルディレス・ランテ(Ardiles Rante)
今年の2月に350.org事務局長メイ・ブーヴィは西ジャワ州インドラマユ県にある石炭火力発電所、そして日本の民間銀行も巨額な支援を行っているチレボン県の石炭火力発電事業を視察し、付近で生活をする住民と対話するためにインドネシアを訪れました。その時の体験談を取材形式でご紹介します。
Q:インドネシアのどの石炭力発電所に隣接するコミュニティを訪れましたか?
メイ・ブーヴィ(以下、メイ):旅路はまず、インドネシア西ジャワ州チレボン(Cirebon)から始まりました。現地の住民たちは、稼働中の石炭火力発電所の停止と、発電所増設計画の撤回を目指して闘っていました。 丸一日、彼らと語り合い、親交を深めました。反石炭プロジェクト運動を率いる彼らこそ、チレボンを特別な場所にしているのです。 さらに、チレボンでは新たな発電所を建設するために、日本の国際開発銀行とメガバンクを始め、約21億米ドル(約2366億円)の融資を決めているという話も伺いました。翌日は、同じ西ジャワ州のインドラマユ(Indramayu)にある別のコミュニティを訪れました。現地の住民たちは、中国が支援し建設されたの石炭火力発電所のせいで、深刻な健康被害を受けています。 日本のJICAもそこで、新たな石炭火力発電所への融資を検討しています。
Q:住民との対話を通じてどのようなことを学びましたか?
メイ:チレボンやインドラマユ、そしてインドネシア全土で、漁業やそれを生業としてきた人々に具体的に何が起きたのかについて知りました。魚がいなくなってしまったのです。 チレボンの名物は、テラシとよばれる小エビのペーストです。 ウィキペディアのチレボンのページにも、テラシについての記載を見つけました。 チレボンにとってのテラシは、米国人にとってはパン、日本人にとってはお米のようなものかもしれません。 問題は、この小エビの棲息地に発電所が建設されて以来、網いっぱいの小エビが採れなくなってしまったのです。今日出会ったドゥスマッドという漁師も、その影響を受けた一人です。 そこでドゥスマッド、塩づくりで生計を立てようとしたのですが、塩田は石炭灰が混じり、塩づくりには適さなくなっていたのです。ドゥスマッドと同じ村の住民たちは、インドネシア全土で活動中のNGO「インドネシア環境フォーラム(WALHI)」や「Jatam」、「グリーンピース」といった、350のパートナー団体による支援を受けています。 今週開催したこれらの団体とのミーティングで、チレボンの発電所2基を含め、インドネシアでは計109基、発電量にして3万5千メガワットの発電所の建設計画が進行中であることを知りました。 同国政府は、脆弱な環境影響調査基準などで、石炭プロジェクトを積極的にサポートしています。その上、これらのプロジェクトは、主に日本政府や民間銀行などからの多額の投融資を受けています。だからこそ、日本の預金者が自分の銀行どのようなお金の使い方をしているのかについて考え、アクションをとることが大事になってくると思います。
西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電所近くの自宅で、自分のX線写真を見せてくれたアイニちゃん(8歳)。肺の部分に小さな影が見える。
撮影:アンディレス・ランテ(Ardiles Rante)
Q:最後に、この体験を受けて感じたことを教えてください。
メイ:チレボンやインドラマユのように、最前線で闘う住民たちが日々味わうであろう挫折を思うと、打ちのめされそうになります。生業を奪われた上、文化の土台そのものまでが壊されているのです。 でも、別れ際のドゥスマッドのことを、私は決して忘れません。彼は、笑顔で私たちに祝福の言葉を伝え、私たちのために祈り続けると言ってくれました。気を落とさずに闘い続けるよう、励ましてくれたのです。滞在中は、私は米国から、キーストーンおよびダコタ・アクセス両パイプラインの建設をトランプ政権が承認したという非常に残念な知らせが届き、落ち込んでいました。しかし、世界を見渡せば、大切な土地や愛する人を守るため、至る所でこのような闘いが繰り広げられています。あるいは、それは水や汚染、気候への影響といった、地域の未来の安全に関わる闘いでもあるのですが、結局のところ、これらの問題は私たち皆に影響を及ぼします。
終
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自らお金の流れを考える
350.org Japanは、化石燃料や原発にお金を流していない、地球にやさしい銀行選びを促すMY …
トランプ-安倍時代の日米関係はどのように進展するか? アジア太平洋地域における地球温暖化対策とパリ協定への意味
日本の内閣総理大臣安倍晋三氏は、11月19日から20日にかけてペルーで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力)の首脳会談への参加にあわせて、11月17日木曜日、アメリカ大統領に選出されたトランプ氏を訪問します。
現職の日本の総理大臣がそのように早いタイミングでアメリカの大統領に選出された人物を訪問した前例はありません。なぜ安倍首相は次期大統領トランプとその閣僚らとの友好関係を築く事にこんなにも熱心なのでしょうか?
安倍首相のウィッシュリストには、二つの主要課題が挙げられるとみられます。それらは日米関係への転換点と、アジア太平洋地域が真に持続可能な開発路線を歩むための可能性をもたらす物です。
- 環太平洋経済連携協定(TPP)
安倍首相の地政学上の野心と、アジア太平洋地域の経済政策の鍵を握るのは、TPPの早期締結です。安倍政権は、アメリカの選挙期間、パリ協定の批准をおしのけてまでも、衆議院でのTPP関連法案の審議を強行しました。結果、パリ協定の批准はずいぶん遅れてしまいました。オバマ大統領が強力なTPPの支持者であり、スポンサーであった一方、トランプ氏は、彼の政権下で迅速にTPPをゴミ箱に放り込むと明確に発言しています。アメリカの批准なしには、発効の条件である少なくとも6カ国の批准と、すべての交渉参加国のGDPの85%が満たされません。日本の自由民主党の大物議員ですら、協定は死んだと発言しています。このことは、中国の台頭に応えるための、安倍首相のアジア太平洋における経済貿易戦略の信頼性を失わせる結果となっています。
では、経済面において、安倍首相にできることは果たしてなんでしょうか。
まず、TPPを諦める事です。多国籍企業にさらなる自由を与える事は、政府による温室効果ガス排出削減の役割を低減させ、最下層への競争を早め、そして、格差の拡大を招くでしょう。さらに、中国をそういった経済のフレームワークから除外する事は、東アジアの緊張を高める結果になるだけでなく、中国が自分たちによるルール作りを追求する事に対して、さらに大きな理由を与えてしまいます。南シナ海をみただけでもわかりますし、また中国がスポンサーの機関(例えばAIIBなど)の設立につながります。
そのかわり、安倍首相はこの機会を、アメリカやトップダウンの少人数の利益のためのルール作りに依拠しない、すべての人に幅広い利益をもたらす代替の地域経済モデルを作り上げるために活用すべきです。そういった経済モデルは中国との協力も含め、持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定と整合性のあるものでなくてはいけません。持続可能な未来にむかって地域協力や技術移転を生み出し、さらに2050年までに温室効果ガス排出ゼロ経済への変革を加速させるような、新たな経済の課題設定が必要です。
これを実行するためには、安倍首相にはクリーンコールと呼ばれる石炭利用技術の推進をあきらめ、再生可能エネルギーへの重点的投資が必要です。安倍首相はトランプの意向に引き込まれ、石炭と化石燃料の拡大をおこなう可能性もありますが、世界の大多数の意見に対抗して気候変動対策を怠れば、日本とアメリカのより一層の孤立化を招き、パリ協定の成功と皆が安心して暮らせる地球を台無しにします。
アメリカの場合、オバマ政権下で採択されたクリーンパワープランによる温室効果ガスへの排出規制を引き下げ、多くの汚い石炭火力発電所に影響を与え、国有地のリースに関する規制を緩和する可能性がありますが、これは石炭に対する需要の縮小とコストの拡大、対、再生可能エネルギー投資への需要の拡大とコストの縮小という、より大きな枠組みで見た石炭の経済性に大きな影響を与える事はないでしょう。日本の場合、海外における石炭開発の巨額の補助金を継続していることが、過去の電源としての石炭の延命につながるかもしれませんが、東南アジアの成長を続ける経済は、よりクリーンで、健康的な代替を求めるようになるでしょう。国内的には、48基の石炭火力新設計画がありますが、これはパリ協定を批准した日本の義務にまったくもって整合性を欠くものであり、日本の石炭への執着に対する国際的な批判をさらに増やすことになるでしょう。
トランプの化石燃料支持路線に従う事は、気候災害、経済の衰退、そして座礁資産化への確実な道を意味します。さらに、日本の化石燃料依存を深化させることで、再生可能エネルギーにおける中国の世界的なリーダーシップをさらに強化することになり、中国にさらなるソフトパワーと、この地域における持続可能な開発のための市場をゆずることになります。
石炭火力を推進するかわりに、アジア太平洋でさらに需要が拡大する再生可能エネルギーの分野で、日本の信頼性や価値ある技術で評判の日本の企業を活用し、日本の再生可能エネルギー市場、そして輸出を拡大していくことが出来ます。これはカリフォルニアなどのアメリカの先進的な州や、トランプが政権につこうとも気にせずに再生可能エネルギーの発展と確信を積極的に支援し続ける世界の技術を牽引するリーダー達との協力の元でおこなっていけます。日本を再び世界のリーダーとしての地位に就かせることにもなり、地域内での再生可能エネルギーの需要が成長するにしたがい、日本の経済面も強化するでしょう。
これは安倍首相のチェックリストの二番目の項目につながります。
2.中国と日米同盟
トランプが大統領選を勝利した事で、確実にアメリカはトランプ流の「アメリカ第一」の保護主義に向かっていくでしょう。これは中国を敵に回すことになり、もしも貿易規制が加速すれば中国が応酬にでざるを得ない事で、日本を含む市場がマイナスの影響を受ける可能性があります。アジアにおけるアメリカの役割に対するトランプの見方は曖昧です。そして安倍首相の主な懸念は、トランプによる、日本を護衛するためにアメリカが支払っているコストを全額負担すべきという要求と、北朝鮮の脅威に対抗するために日本と韓国は核武装すべきだという思いつきの発言です。
この発言が日本との二国間関係において何か実質的な変化をもたらすかどうかは疑わしいところですが、安倍政権は日米安保条約の重要性を強調し、中国の拡大するパワーと影響力に対して対抗するためアメリカの存在を東アジアにつなぎ止めたいと強く望んでいます。アジアでの防衛協力に対するトランプの冷遇は、安倍首相に独立した外交政策にむけた戦略的関係性を再考させるでしょう。
では、中国に対して何をすべきでしょうか?
封じ込め政策については忘れて、気候変動を止めるための協力を通じた地位安全保障の形成をおこなうべきです。中国はゼロサムゲームの中で、既に強い力を持っています。貿易を武器として使ったり、軍拡を通じて敵対関係を維持するのではなく、お互いのための経済的反映と、地域の安全保障のために中国とのさらなる協力に日本は向かうべきです。日本の繁栄は今や中国の繁栄と表裏一体であると認めるべきです。中国の参加なしで貿易ルールをコントロールしようとするよりも、レジリエントな炭素ゼロのインフラへの国際的な投資のための透明性の強化と、社会・環境へのセーフガードを強化していく事で、豊かで、持続可能でそして平和なアジア太平洋地域を中国とともに達成するべきです。それは国内的にも、二国間関係的にも、そして国際的にもウィンーウィンーウィンな解決策です。
パリ協定の発効を潤滑油として活用し、安倍首相は100%再生可能エネルギーベースのアジア太平洋地域を達成することに日本の企業が参加する新たな機会として、AIIB への参加を再考することもできます。化石燃料拡大への道を歩み続ける事は、単に危険な温暖化の未来に自分たちを閉じ込めることにしかなりません。地球規模の安全保障と経済的福祉に対してもっとも大きな脅威です。
日本のアジア地域での役割を再考する
ドナルド・トランプの第45代アメリカ合衆国大統領選出は、日米同盟を越えた地政学的、また、地域経済におけるオルタナティブを設定する機会と、経済的優位を誇る中国を、アジア太平洋地域の持続可能で協力的な未来に巻き込む機会を、安倍首相に与えました。つまりTPPを断念し、石炭技術の輸出をやめ、そしてパリ協定のもとで、未来の再生可能エネルギー技術に基づいた、持続可能、平和、そして豊かなアジア太平洋地域というゴールを中国とともに達成してくということを意味します。…
トランプ氏の石油に対する姿勢は、気候について日本に対する圧力を緩める可能性がある
渡辺千咲 , スティーブン・スタプチンスキー、ブルームバーグ
2016年11月10日
ドナルド・トランプ氏の驚くべき大統領選勝利と、石炭生産を拡大するという早期の公約は、5年以上前の福島原発事故を原因とし、原子力エネルギーに代わるものを模索する日本への圧力を緩めることになるだろう。
東京に拠点を置くエネルギーコンサルティング、Mathyosの創業者トム・オサリバン氏はメールで、「全米で石炭や石油ガス業界に対するトランプ氏の公約が火曜日の大統領選での勝利に大きく貢献した。そのため、日本や他の主要な発展途上国による温室効果ガスの排出削減に向けた取り組みの鈍化につながる可能性がある」と指摘した。
トランプ氏は気候変動を、中国が生み出したデマだと述べ地球温暖化についてのパリ協定からの撤退を誓ったと共に、最も汚れた化石燃料である石炭の生産を増やすことを誓った。
仮にトランプ政権がパリ協定を否定した場合、日本政府は排出を削減し、石炭拡大計画を終了するという確約に対する「圧力が緩和した」と受け止める可能性があると、グリーンピース・ジャパンのエネルギー活動家、ケンドラ・ウルリッチ氏がメールで伝えた。
日本の石炭依存は、特に福島原発事故以来、地球温暖化と戦うための取り組みが十分ではないとして海外から批判が高まっている。 外国における石炭事業に対する日本の資金供給も非難の対象となっている。
京都に拠点を置く環境団体の気候ネットワークが集めたデータによると、日本は石炭火力発電所を新規に48基建てる計画をしている。その合計発電容量は23ギガワットだ。
「日本は転換期にあります」と、350.orgの日本ダイベストキャンペーナーの古野真氏がメールで伝えた。 「日本国民は、海外から輸入される汚染された化石燃料エネルギーに依存し続けるのか、世界の他の国々と連携した再生可能エネルギー社会への移行をリードするのかどうかを決断しなければなりません」
「石炭を後押しするトランプ氏の姿勢は、世界の石炭業界と石炭価格を楽観的にさせるものです」と、中国石炭輸送販売協会のデビット・ファン氏が北京から電話で応えた。 「これまでの発言どおり、さらなる石炭の使用を推奨するようであれば、オーストラリアやインドネシアの石炭鉱山会社が最もその恩恵を受けるでしょう」
日本と中国は、いくつかの環境団体が昨年発表した研究によると、2014年末までの8年間で石炭電力を調達するために350億ドル以上を貸与した。
2015年6月に発表された、自然資源防衛協議会、オイル・チェンジ・インターナショナル(OCI)、世界自然保護基金による共同研究によると、日本は200億ドル以上、中国は150億ドル提供した。
石炭融資
当時それらの環境団体は、「この政府の石炭融資(大部分は輸出支援という形式である一方で、開発支援および一般融資でもある)は、石炭の使用を永続させ、気候変動を悪化させています」と述べた。 「それを即座に停止する必要があります」
国内では、日本の大手電力会社は、失われた原子力を補うために、さらに石炭火力発電所を建設する予定だ。 また、政府は固定価格買取制度などのインセンティブで再生可能エネルギーを支援しているが、新しいクリーンエネルギーの容量は不十分だ。
約1年前に発表されたレポートで、日本は、排出量と気候保全対策を58か国で比較する指標で最悪の国にランクされた。これは、米国やインドのような他の主要排出国よりもはるかに低い。
ジャーマン・ウォッチ(Germanwatch)と気候行動ネットワーク・ヨーロッパ(Climate Action Network Europe)によると、日本はオーストラリアのすぐ上で、58位だった。 そのレポートによると、トップ3が空位だったため、デンマークがトップだった一方でランクは4位となっている。
環境団体は、日本が2013年度の水準から2030年までに温室効果ガス排出量を26%削減すると誓ったのは不十分であるとして非難した。
一方で、日本政府がパリ協定を批准し、現在その確約を守る責任を有するのは1つの肯定的な兆しだと、350.orgの古野氏が述べた。…
気候変動に関する「数値」を再考慮する
(執筆者 ビル・マッキベン、執筆先NEW REPUBLIC)
人類の未来は数学に依存しています。木曜日に発表された新しい研究内の“数値”は、今までで最も不吉なものでした。
その“数値”とは、単純な計算で、地球温暖化に地球をこれ以上蝕まれたくなかったら、世界の既存炭鉱や原油採掘用の井戸内に眠る化石燃料を、あとどれだけ燃やすことができるのか、詳しく説明しています。 言い換えれば、私たちの目標が、地球の温度上昇を2℃以下(世界の国々が合意した上限)に抑えるためには、あとどのくらい新たに掘削できるのでしょうか?
答えは、ゼロ。
そうです。今回発表された新しい研究によると、この壊滅的な温暖化を防止しようと真剣に考えるなら、今後一切、新しい炭鉱を掘ったり、新しい土地に油田用の穴を開けたり、さらにパイプラインを構築したりすることは許されないのです。 そう、ただの1つも。 既に私たち人間は、化石燃料の辺境地まで拡大し終えており、 今後私たちができる唯一の選択は、既に採掘済みの化石燃料由来のエネルギーを、迅速的に管理して減らすことです。
新しい数値は驚異的です。 わずか4年前に、「地球温暖化に関する非常に恐ろしい新たな数値(Global Warming’s Terrifying New Math)」」と題するエッセイを書き、 その中で、私はロンドンに拠点を置くシンクタンク、Carbon Tracker Initiativeの研究を引用しました。 その研究では、世界の化石燃料業界が特定する石炭、石油、ガスの未開発埋蔵量は、地球の温度上昇を2℃未満に抑えたい場合に私たちが燃やせる炭素量の、5倍にも及ぶことが明らかになりました。 つまり、エネルギー企業が所有権を主張する化石燃料を全て掘り尽くし、燃やしてしまった場合、地球が5倍加熱されてしまうということです。 この計算により、さまざまな大学や教会、財団が、化石燃料関連株からの大規模な投資撤退を始めました。 そしてそれ以来、投資撤退が社会通念となっています。 現在、中央銀行総裁や世界の指導者の多くが、化石燃料の埋蔵量の大部分を地中に残しておく必要があることに同意しています。
しかし、新しい数値はさらに強烈です。 これは、ワシントンに拠点を置くシンクタンク、Oil Change International(OCI)
…東アジア気候変動リーダーズキャンプで得たアイディアとつながり
インターンの高橋淳志です。
8月27日から8月29日まで韓国で行われたEACLC(East Asia Climate Leaders Camp:東アジア気候変動リーダーズキャンプ)に参加してきました。
キャンプは職場である国際環境NPO「350.org」の主催で行われ、日本・韓国・台湾・香港・中国・フィリピン・インドネシア・ベトナムの8カ国・地域の350.orgメンバーや環境保護団体スタッフなどが集まりました。(写真はプレゼンを行う韓国チームです。)
テーマは「ダイベストメント+気候変動との闘い最前線」で、参加者は火力発電所の被害について知るとともにダイベストメント(化石燃料関連会社からの投資撤退)を自分の国でいかに広めていくか、知り、考える機会を得ました。
ダイベストメントは欧米を中心に進んでおり、東アジアでは目立った動きがありません。中国やベトナムのように権威主義体制が、市民団体の活動を制限している例もあります。そのような制約の中で、どのような協力が出来るか、熱を帯びた議論が行われました。
まず初日に行われたのは、参加者が今の仕事につくきっかけとなった出来ごとについて語り合うセッションでした。私は台湾の環境NPOの職員と話しました。350.orgは主に気候変動の原因となる温室効果ガスの排出を根拠にして、石炭火力発電所を問題視しています。しかし彼女が働いている団体は、大気汚染を問題視して活動しているとのことでした。彼女たちが持ってきた資料によれば、台湾中部にある台中市には韓国資本が開発した、570万kw(キロワット)にも及ぶ世界最大の火力発電所群(10基の石炭火力発電所と4基の石油火力発電所)が立地しているといいます。
これまで350.org Japanのキャンペーンでは、気候変動の問題を中心に据えてきました。しかし今後は大気汚染に焦点を当てて、立地地域住民の健康被害に焦点を当てるキャンペーンを行う必要もあるかもしれないと彼女の話を聴いて感じました。
またベトナムからの参加者が、日本の政府機関であるJBIC(国際協力銀行)やJICA(国際協力機構)の石炭支援を問題視していることも、大きな衝撃を私に与えました。環境NPOの業界に入り、日本の企業や政府機関が石炭事業を海外で行っていることを知ってはいました。しかし実際に現地人が反発している様子を聞くと、一日本人として責任を感じざるを得ませんでした。
日本企業や日本政府は、日本の高効率の石炭火力発電技術は、世界の大気汚染や気候変動を軽減するのに資すると考えています。しかし途上国企業や政府が石炭火力発電所誘致を望み、現地の住民が反発しているという民意がねじれた状況で、日本企業や政府が石炭事業を進めるべきとは、とても思えませんでした。
2日目はフィールド・トリップに行きました。キャンプが行われた忠清南道(チュンチョンナムド:日本でいう都道府県)には、韓国の石炭火力発電所の約半分が立地しています。
(Danjing石炭火力発電所の遠景)
地元で反対運動に行っている方によれば、石炭火力発電所からの排出物によって、ガンなどの形で健康被害が出ているそうです。私たちはダンジン石炭火力発電所と、その新規立地計画予定を見学しました。近くには家族連れが海水浴を楽しむビーチがあり、とても環境汚染が起きている場所とは思えませんでした。
日本では94基の石炭火力発電所が現存し、48基の新規石炭火力発電所建設計画があります。電力生産は、石炭の他にも天然ガスや原子力、再生可能エネルギーなどの多様な代替手段があります。日本にこんなに石炭火力発電所は必要なのか、改めて考えさせられるフィールド・トリップとなりました。
(「汚い石炭を止めろ」という意味のバナーを掲げる参加者)
3日目は他の地域とどんな協力が出来るか参加者が話し合いました。例えば気候変動や大気汚染は、被害に脆弱な人々が多い、途上国においてより悪影響が大きくなります。途上国で日本企業がプロジェクトを行っている場合、途上国と日本の市民団体が共同でキャンペーンを行うことが出来るという提案がなされました。その話を聞いて、私たち先進国の環境NPOには、気候変動や大気汚染の被害を受けている人々の声を、大量排出者が多くいる先進国に届ける役割があると思うに至りました。
(プレゼンを行う中国チーム)
また日本人は石炭火力発電所がもたらす気候変動や大気汚染の被害をよく知らないので、途上国の人々の被害を共有することは日本人の啓発につながるというアイディアを得ることが出来ました。
私が今回のキャンプで感じた一番の教訓は、「難しいからこそやる価値がある」ということです。石炭火力発電所のプロジェクトを止めたり、金融機関に「パリ合意」と整合的な投融資方針を取り入れてもらうことは簡単ではありません。しかし簡単ではないからこそ、誰かが本気で取り組み、気候変動や大気汚染の被害に苦しむ人々を減らしていく必要があります。そう思えたことが、このキャンプに参加して得た一番の収穫だと思います。
今回のつながりを一度きりで終わらせないために、今後は東アジアの350.orgチームと他の環境保護団体が共同でキャンペーンを展開するためのプラットフォームづくりへとフェーズが移行していきます。このプログラムに参加したことによって、同じ問題に取り組んでいる仲間が東アジア中にいることを確認出来、私たちの取り組みに対する無言の後押しを受けたような気がしました。
企業の資産が突然負債に? 「カーボン・バブル」の隠れたリスク
インターンの高橋淳志です。
今日は350.orgが重要と考えている「座礁資産」と「カーボンバブル」について概説します。
座礁資産とは、現在埋蔵量として資産価値を持っている化石燃料や化石燃料関連インフラのうち、気候変動規制が行われることによって、その価値がなくなる恐れがある資産を指します。つまり現在化石燃料会社の資産として計上されている埋蔵資源が、使えないものに変わる恐れがあるのです。これには埋蔵されている化石燃料のみならず、石炭運搬設備、石油精製所、LNG液化基地なども含まれます。
350.orgによれば、現在の化石燃料埋蔵量に含まれる炭素の量は、2734から5385ギガトンに上ります。昨年のパリ協定では「産業革命前と比べて世界の平均気温上昇を1.5℃~2℃以内に抑える」という目標が採択されました。パリ協定の1.5℃目標を達成するためには、使えるのは200ギガトン程度、2℃目標の場合は470ギガトン程度しか使えないことになります。つまり現在確認されている化石燃料の埋蔵量のうち、約9割は使えないことになるのです。だいたい世界の二酸化炭素の総排出量が40ギガトン程度なので、今の水準の総排出量を継続してしまえば、1.5℃目標ではあと5年、2℃目標ではあと11年しか二酸化炭素を排出できません。
350.orgは、気候変動規制に伴って化石燃料資産が、資産として評価されなくなる状態を「カーボン・バブル」と呼び警鐘を鳴らしています。今まで資産だったと考えられていたものが、ある日突然資産でなくなり、化石燃料関連企業の株式や債券の保有者に損害と混乱をもたらす恐れがあります。
つい最近ライス大学のベーカー研究所が発表した作業文書によれば、化石燃料産業にとっての気候変動のリスクは以下の四つに分けられています。
・政策リスク(政府の規制や政策変更へのコミットメントのリスク)
・需要リスク(気候変動などによって世界的に需要が下がっているリスク)
・ダイベストメント・リスク(株主や草の根運動のプレッシャによって、投資家が化石燃料産業の株式の保有を避けるリスク)
・競合リスク(化石燃料生産者間の競合や、原発や再生可能エネルギーと競合するリスク)
作業文書の著者は、これらのリスクよりも、圧倒的に気候変動対策が失敗した時のリスクの方が大きいと主張しています。2006年に発表された「スターン・レビュー」と同様、気候変動対策コストは対策しなかった場合のコストを下回るという結論に達したものと思われます。
現在資産として計上されている化石燃料が座礁資産として日本でも顕在化すれば、多額のエネルギー事業を抱える日本の総合商社や、エネルギー関連企業にも大きな負の影響が及びます。これらの企業の株価が下落し、投資家の資産を傷つけることになると予測されます。
日本での座礁資産については「オックスフォード大学スミス企業環境大学院持続可能金融プログラム」が今年の5月に発表した報告書が日本でも報道されました。報告書は、日本政府が石炭火力発電を奨励してきたことを指摘し、現在計画段階にある49基の石炭火力発電所が完成すれば、供給過剰となって発電所が座礁資産となる恐れがあると警告しています。それらの資産の合計は約7兆円から9兆円にも上るといいます。発電所が座礁資産となれば、当然電力会社の負債となって、最終的には電力料金に跳ね返ってきます。電力会社の石炭偏重が、国民の負担を増やす恐れがあるのです。
(この報告書には日本人研究者から批判も出ています。例えば以下のリンクを参照ください。しかしこれらの批判は、石炭火力発電への投資を正当化するものではありません)
火力発電所は数十年運営してようやく元が取れる事業です。今石炭火力発電所に投融資するということは、30年後、40年後も使われるという見込みが初めて合理的に許容されます。この報告書は本当にそれらが必要なのかという、重要な疑問を投げかけています。
350.org およびその日本支部である350.org Japanは、気候変動による被害のみならず、気候変動対策によって発生する「座礁資産」や「カーボン・バブル」について警鐘をならしています。今後は個人のダイベストメントを促すMy Bank My Futureというキャンペーンを展開していく予定なので、今後とも350.or Japanの活動に注目してくだされば幸いです。
【参考リンク】
- ベーカー研究所の作業文書(英語) http://bakerinstitute.org/media/files/files/6b58fc69/WorkingPaper-ClimateRisk-072116.pdf
- オックスフォード大学スミス企業環境大学院の持続可能金融プログラムの報告書(日本語) http://www.smithschool.ox.ac.uk/research-programmes/stranded-assets/satc-japan-japanese.pdf
- GEPR:オックスフォード大の石炭火力座礁資産化論に異議あり(日本語) http://www.gepr.org/ja/contents/20160606-01/
【過去記事】先日開催したイベントの様子です。350.org/ja/ethicalinvestment_eventreport/
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ユネスコに、世界最大のマングローブ林を保護するように要請するために、5万人が請願書に署名
インドとバングラデシュ沿いに広がる40万ヘクタールのシュンドルボン国立公園は、世界最大のマングローブ林です。この国立公園はベンガルトラの最大の生息地であり、イラワジ川やガンジス川のイルカなど、他の絶滅危惧種も保護しています。さらに、マングローブ林はシュンドルボンおよびその近くに住む400万人の人々を激しい暴風雨などの災害から守る、「防災の森」として極めて重要な役割を果たしています。
シュンドルボン国立公園は、1987年に世界遺産として登録され、生物圏保護区に指定されています。 生態系を維持し、この地域に住む人々の生活を向上させるための数十年にわたるさまざまな管理の取り組みが実施されてきました。
Bangladesh-India Friendship Power Company (Pvt) Ltd.(バングラデシュ・インド友好電力会社)の下で、NTPC India(インド国営火力発電公社)は、シュンドルボンの緩衝地帯から4キロ離れたところに1320メガワットのランパル石炭火力発電所の建設計画を進めています。この石炭火力発電所は、ポシュレ川から毎日、大量の水を汲み上げ、発電機の冷却後、汲み上げた水の役5倍の汚水を排出し、マングローブが頼る水を汚染し、水のバランスを変えてしまいます。 また、この発電所を稼働させるために、年間472万トン(大型ダンプカーおおよそ142万台)の石炭を輸入する必要があります。この量が、狭い水路を通って船で輸送されため、ポシュレ川は石油や石炭流出のリスクや騒音公害にさらされます。
石炭開発から世界遺産のシュンドルボン国立公園を守るため、この国立公園を危機遺産リストに追加するようにユネスコに求める請願書への署名を350.orgやFriends of the Earth U.S.などの国際環境団体が呼びかけました。5万人以上の署名者が集まり、来週イスタンブールで会合を開かれる世界遺産委員会に合わせて請願書はユネスコに今週提出されました。
住民の生活や健康および絶滅危惧種の生態環境を脅かすこの石炭火力発電所計画への資金が行わないように、私たちはインド輸出入銀行 (Export-Import Bank of India)に働きかけ、ランパル石炭火力発電所の建設計画に反対し続けます。
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#Coal Japan: G7から欠けていた温暖化対策、そして日本の石炭ギャンブル
地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」の署名式が、4月にニューヨークの国連本部で行われました。5月下旬に三重県の伊勢志摩で開催されたG7サミットはそれに続く、最も大きな国際的なイベントだったにも関わらず、地球温暖化や気候変動問題に対する取り組みへの進展はありませんでした。日本は世界をリードする機会を逃してしまったと言っても良いでしょう。
日本の国内外での石炭開発や石炭火力発電所への多額の投融資を明らかにし、日本の機関投資家に化石燃料への投資を止めるように呼びかけるため、350.org JapanはG7サミットの直前に合わせてSTOP!石炭投資アクションを行いました。
国内でも国外でもあまり知られていませんが、日本は世界で一番石炭への公的支援を行っている国です。 米国のNRDC をはじめとするNGO団体が発表したG7国家による石炭出資額に関するの新たな報告書によると、日本は2007年から2015年の間に海外の石炭火力発電所と石炭開発に 220億ドル以上の出資を行いました。これはなんと、G7国家による石炭への公的支援総額の52%にのぼります。
上のグラフが示す通り、日本はG7内ではずばぬけて多額な公的支援を石炭関連事業へと注いでいます。
さらに知られていないのが、銀行などの日本の民間金融機関が世界中の石炭および化石燃料関連企業に巨額の資金を注ぎ込んでいることです。 昨年、350.org Japanが行った調査では、2014年に日本の民間銀行および保険会社が国内の石炭関連企業に対し、5兆円(約450億米ドル)の投融資を行っていたことが明らかになりました。
また、日本は現在国内に47基もの新たな石炭火力発電所の建造を計画しています。地球温暖化、公衆衛生、そして日本の経済にとってこれは絶望的な知らせです。ハーバード大学およびグリーンピースによる最新の報告書によると、これらの新たな発電所の稼働期間中に少なくとも1万人もの若年死亡者が出るおそれがあることが分かりました。 また、オックスフォード大学の研究では日本の火力発電所は新旧問わず800億米ドルに相当する座礁資産となる可能性があることが明らかになりました。
世界は再生可能エネルギー中心の電力供給体制へ向かっているにも関わらず、なぜ日本はまだ化石燃料への投資を続けているのでしょうか?
2011年3月11日の東日本大震災によって福島原発がメルトダウンを起こし、それは原発に対する大規模な反対運動に繋がりました。それ以降、日本は化石燃料、特に石炭への依存度を高めてきました。
しかし、原子力エネルギーの代替として化石燃料の使用量を増やすことは、日本がパリ協定に基づく責任を果たさないということを意味します。そしてさらに持続可能な道から離れ、他の先進国から孤立してしまいます。
日本の地球温暖化政策への不十分さと、今なお続いている原子力災害を踏まえ、私達は100%再生可能エネルギー社会への転換を促進するために化石燃料および原子力への投資撤退を運動を推し進めています。
#cooljapan それとも #coaljapan ?
5月19日(木)、20日からのG7財務大臣会合を留意し、財務省の前で麻生太郎財務大臣に日本の石炭事業への新規融資の即時に終わらせること、そして再生可能エネルギー投資への切り替えを求めるメッセージを伝えるためのアクションを行いました。 経産省が推進している「Cool Japan」をもじって、350.org Japanメンバーは、麻生太郎財務大臣に扮したイアンと共に、「Coal Japan」と書かれたタスキを身に着け、「クリーン」で「安い」 石炭を出勤中の通行人に配りました。 このアクションの一環としてCOAL JAPANのウェブサイトも立ち上げ、ハフィントンポストにもブログがアップされました。…
クールジャパン、それともコールジャパン?
[このブログは日本ダイベストメントキャンペーン担当の古野真がハフィントンポストへ投稿したブログである。 English below.]
G7伊勢志摩サミットに合わせて、日本の石炭推進の状況を世に知らしめるべく、「コールジャパン」キャンペーンを私たちは始動することにした。日出る国日本を「コール」な国から真に「クール」な国へと変えることが、「コールジャパン」の目的だ。
今週末三重県伊勢志摩で行われるG7伊勢志摩サミットを直前に迎え、現在世界中の目が日本の動向に向けられている。
G7が開催される伊勢志摩には日本が世界に誇る文化の象徴、伊勢神宮がある。またそれ以外にも、最先端テクノロジーやユニークなアートなど、日本は世界に誇るべき「モノ」や「文化」で溢れている。
このような「日本の魅力」を日本政府は組織的に世界に発信しており、その中でも代表的なキャンペーンが経済産業省が進める「クールジャパン」だ。
しかし、果たして日本は本当に「クール」なのだろうか?
あまり知られていないことだが、日本は現在石炭火力発電所を国内に47基新設する計画を進めている。これは他のG7諸国の脱炭素計画に真っ向から逆行する動きであり、石炭推進について日本はG7の中で完全に孤立している。
また、日本は他のG7諸国とは比べようのないほど巨額な公的資金を石炭関連プロジェクトにつぎ込んでいる。その額は2007年から2014年の間に2000億ドルに登る。日本には「クール」より「コール(石炭)」の呼び名の方が、はるかにお似合いのようだ。
近年では、G7の米国、英国やフランスなどが石炭事業への国際的支援に対する規制を厳しくしており、これらの国々は国内でも次々と石炭火力発電所を廃止している。イギリスはすでに完全な脱石炭化を達成しつつあり、アメリカも古い石炭火力発電所を急ピッチで閉じている。その数は過去5年間の間で200以上に達している。
しかし、日本は相変わらず世界一の海外石炭事業推進国として邁進しており、脱炭素化へと進む世界から次第に見放されている。
コールは一切クールではない。
石炭(コール)は自然環境にも人々の暮らしにも壊滅的な影響をもたらす地球温暖化の主な原因である。そして皮肉なことに、日本は気候変動による被害をもっとも大きく受ける国の一つなのだ。例えば、地球の平均気温が4度上昇すると、首都圏でも750万人が海面上昇による被害を受けると言われている。2度の上昇の場合でも420万人分の世帯が浸水すると言われている。
このような深刻な影響があるからこそ、2015年のG7では21世紀後半までに完全に脱炭素化した世界を目指すことが合意されたのだ。さらに、2015年の末にパリで開催された気候変動に関する国際会議では、2050年までに完全なる脱炭素社会を実現することが、世界195カ国により合意された。
言い換えると、温室効果ガスを大量に排出する石炭をエネルギー原として使用することはもはや不可能であり、「石炭にはもう未来が無い」と日本を含む世界が合意したのだ。そして上記の合意を達成するため、世界は温室効果ガスの大幅な削減と、再生可能エネルギーの導入を急速に加速させることが求められている。
一方、世界と結んだ約束とは裏腹に、国内で石炭火力発電所の新設を進め、世界の石炭事業を支える日本は完全に孤立している。しかも、日本は消費する石炭の100%をオーストラリアやインドネシアといった海外から輸入しているのだ。このまま石炭や化石燃料依存を続けると、国はエネルギー自給率を向上できず、また世界経済の不安定性にさらされることになる。
では一体、何が「コールジャパン」を支える原動力となっているのか?
その答えはすばり「お金の流れ」である。日本の公的金融機関や民間銀行、または機関投資家が運用するお金が、大手一般電力会社などへと流れている。これらの企業は自らの利益を守るために、再生可能エネルギーの導入や成長を、あらゆる手を使い抑えているのだ。
去年私たち「350.org Japan」が行った調査により、日本のメガバンクグループ(三菱東京UFJ、みずほ、三井住友銀行、三井住友信託銀行)が化石燃料や原発に関わる企業へ巨額な投資や融資を行っていることが明らかになった。2014年度での投融資総額は、なんと5兆3890億円にまで登った。
同報告書により、日本の生命保険会社も化石燃料・原発関連企業に約4兆3千億円の投資を行っていることが明らかになった。
しかし、同時に希望の光が差し込んでいるのも事実である。日本の金融と環境技術の力を持続可能なエネルギーに集中させれば、日本は必ず自然エネルギーの世界的リーダーになれる。日本では毎年約200億米ドルが新たな自然エネルギープロジェクトに投資されており、これにより年間800万キロワット(kW)の新たな電源が供給されている。これまでなんども大きな改革を成し遂げてきた日本は、世界の先を行く環境大国に成り上がるポテンシャルを十分に秘めている。
G7 が間近へと迫る中、日本は選択を迫られている。「コール」を選ぶのか、それとも「クール」を選ぶのか。世界は私たちの答えを待っているのだ。
350.org Japanは日本も正しい方向へと導くために、「#DivestJapan」キャンペーンを通して、日本の市民、銀行、生命保険会社、年金基金や公的機関が化石燃料や原子力に関わる企業から「ダイベストメント」(=投資撤退)をするよう呼びかけている。そして、ダイベストメントして引きあげた資金を、持続可能な開発を支える自然エネルギーなどへ転換することを提案している。詳しい情報は公式ホームページ www.350.org/ja にてご覧ください。
現在のお金の流れを持続可能な開発へと転換できれば、私たちは真に「クールジャパン」として世界から賞賛されるだろう。
…
【アクション案内】G7議長国・日本はパリ協定の実践をリードすべき 石炭火力発電所への投融資を止め、再エネ推進を!
今月のG7伊勢志摩サミットに向けて、日本は残念ながらパリ協定で明確にされた世界の脱炭素化への流れとは逆行する方向に進んでいます。特に目立つ動きは国内での石炭発電所の新規計画、そして日本政府や銀行が海外の石炭関連プロジェクトに流す巨額な投資です。
このような状況をうけ、国内外の環境団体と連携し、日本の石炭発電所への支援の停止を求めるアクション「No More!石炭投資アクション」を企画しています。このアクションの呼びかけを共有させて頂きます。
【G7財務大臣会合直前 財務省・JBIC前等アクションのご案内】
G7議長国・日本はパリ協定の実践をリードすべき
石炭火力発電所への投融資を止め、再エネ推進を!
2016年5月17日
今年のG7伊勢志摩サミットの議長国として、そして地球温暖化対策の新たな国際的枠組み「パリ協定」の署名国として、日本は国際社会に必要とされている脱炭素社会の実現に向けた政策に真剣に取り組む責任があります。しかし、日本は最も温室効果ガス排出量が多い石炭火力発電所の新規建設49件を国内で計画しています。また、これまでにも日本の政府や民間の金融機関は海外における石炭火力発電プロジェクトに巨額の資金を投じ、現地で多くの人権侵害や環境破壊を引き起こしてきましたが、欧米各国や多くの金融機関が気候変動対策として海外での石炭関連プロジェクトに対する融資規制に動く中でも、日本政府は、まだ石炭火力技術の輸出を推進しようとしています。
このような状況を受け、G7財務大臣会合、そしてG7首脳会議に「持続可能な未来のため、現在新たに計画されている石炭関連プロジェクトへの投融資を直ちに中止し、 再生可能エネルギーに転換していく」というメッセージをしっかりと届けるため、下記のとおり、「No More! 石炭投資アクション」を行います。
また、G7財務大臣会合(5月20日)直前である5月19日の各アクション後には、日本政府に化石燃料への投融資停止をG7で公約するよう求める国際要請書(添付資料を参照。現在、国内外の市民団体から署名を募集中。)を財務省、および、国際協力銀行(JBIC)に提出する予定です。G7首脳会議前に開かれる、国際エネルギー機構(IEA)の高効率石炭技術ワークショップ会場アクション(5月23日)では日本が推進しようとしている「安くて」「クリーン」な石炭火力発技術の矛盾を指摘するメッセージを来場者に訴えます。この機会にぜひ、ご取材ください。
第一回目
- 日時:5月19日(木) 9:00~9:30
- 場所:財務省・正門前(最寄駅:東京メトロ 霞ヶ関)
※ アメリカ、インドネシア、インドなどの海外NGO数名も参加
※ 9:30以降に、財務省・建物内で国際要請書提出(予定)
第二回目
- 日時:5月19日(木)12:20~12:50
- 場所:国際協力銀行(JBIC)前(最寄駅:東京メトロ 竹橋)
※ JBICが融資検討中のインドネシア・バタン石炭火力発電プロジェクト、インド・ダリパリ石炭火力発電プロジェクトの問題に取り組む現地NGOも「融資STOP」を呼びかける予定
※ 13:00以降に、JBIC・建物内で 国際要請書提出
第三回目
- 日時:5月23日(月)9:30~
- 場所:TEPIA イベントホール&会議室(最寄駅:東京メトロ外苑前駅)
※ …
新たな炭鉱開発計画により、水不足と健康リスクに直面する南アフリカのスプリングズ地区の地域社会
南アフリカ共和国ハウテン州イーストランドのスプリングズ地区では新たな4つの炭鉱の開発計画により、小川および地下水の水源が深刻な危機に直面しています。
これらの炭鉱に関する情報を得るのは難しいと考えられ、地域社会の間では懸念が広がっています。 鉱物資源省が鉱業に関する情報は公開すると発表したにも関わらずです。
採掘事業は南アフリカの経済的・政治的な観点において不可欠な役割を果たしてきました。 しかし、その採掘事業は大規模な環境破壊や社会的損害と引き換えに少数のエリート層に莫大な富をもたらしています。
スプリングズでの採掘事業は1888年から実施されています。 時が経つにつれ、有限な鉱物資源の枯渇により閉鎖される鉱山も出てきました。 採掘活動が途切れると、これらの地下鉱脈内の水位が以前の水準より上昇して硫化鉱物と接触することで水質が強酸性になる生態学的過程が始まりました。…
「さようなら石炭」世界から日本へのメッセージ
さようなら石炭 #StopFundingFossils
先週末トルコで行われたG20サミットおよび11月末より開始されるパリの国連気候変動会議に先立ち、世界のリーダーに化石燃料補助金撤廃を求める「 #stopfundingfossils 」アクションが世界中で行われました。
この一環として、350.org Japan チームは日本による石炭関連事業への公的支援の停止を求めるフォトアクションを、巨大な「カーボン・バブル」を使ってJBIC(国際協力銀行)前で実行しました。
危険な地球温暖化を防ぐため、世界の科学者達は、最も炭素排出率の高い石炭を含む化石燃料資源は採掘せずに、そのまま地中に留めておく必要があると助言しています。その場合、化石燃料エネルギーの供給が制限されるため、化石燃料エネルギー関連企業への投融資は無利益なものとなりうることを「カーボン・バブル」と言います。
日本の他にも世界10カ国以上が #stopfundingfossils アクションに参加し、世界のリーダーに向けてたくさんの人たちが、「化石燃料への公的支援をとめろ!」などと抗議しました。
今回の一連のアクションで、とりわけ目立ったのが日本をターゲットとして行われたアクションの数です。#stopfundingfossils ウェブサイトに掲載された世界10カ国で行われたアクションの内の5つが、日本に向けられたものでした。
フィリピンでは、300人の学生達が日本政府と日本の石炭関連企業に「さようなら石炭!」と抗議しました。ベトナムでも、「石炭は命を奪う」と日本大使館前で若者が抗議し、インドネシアでは石炭火力発電所の被害を実際に受けている地元住民が立ち上がり、日本大使館に向けて声を上げました。
<写真は日本大使館前でフォトアクションを行うインドネシアのNGO団体>
石炭推進国:日本
日本は世界一の化石燃料公的支援国です。地球温暖化防止のために、日本産の 「クリーン」な石炭関連技術は必要であるという口実をもとに、日本は2007年から2014年の間、JBIC などの公的金融機関を通し石炭関連事業に2兆円もの「支援金」という名の税金をつぎ込んできました。
【ブログ:僕が見た炭鉱】
今年の8月22-26日、350.org はベトナムのハロン湾でEACLC「東アジア気候リーダーキャンプ」を開催しました。ベトナム、フィリピン、インドネシア、台湾、そして日本など東アジアの国々より30人の若者が集まり、気候変動防止活動をより効果的に進める方法を学びました。こちらのブログ記事は、キャンプの中で、ベトナムのクアンニン省の炭鉱を訪問した際の感想を参加者がまとめたものです。
ミン・ビンさん (25)
ホモ・サピエンスと呼ばれる種によって破壊された荘厳な景色を目にしたとき、肌が怒りでうずくのをあなたは体感したことがあるだろうか?
僕はあの感覚が大嫌いだ。
かつて壮大で奇跡的とも言えるほどの自然が無惨にも破壊された風景をインターネットを通じてワンクリックて見ることができる現代では、人々はこの感覚に麻痺している。
少なくともスマホでこのような自然破壊の写真を見ていた時、私はそう感じた。
「人間が環境を破壊している?」
「そんなこともう知ってるさ、つまらない話はやめてくれ!!」
ベトナムで環境不正義に取り組もうとすると、気が遠くなることが多い。24年間、私は苛立ちを覚えながらも、環境問題に対して具体的な取り組み起こすことを思いとどまってきた。住んでいる人の大半が自然界に関心がない文化で育ってきた自分にとって、環境保全に対する熱意を絶やさず支えることは、容易ではなかった。
だからこそ、CHANGEと350.org ベトナムよりEACLCへの参加通知メールを受け取ったとき、僕は本当に嬉しかった。
EACLCとは:東アジア気候リーダーキャンプ
開催場所:ベトナム、クアンニン省のハロン湾ーユネスコの世界自然遺産
開催時期:2015年8月
参加者:主に東アジアから、計8ヶ国の環境活動に対して熱心な人
EACLCとは、気候変動をテーマにした、炭鉱への見学もあるキャンプだ。石炭と気候変動が深く繋がっていることを、あなたは知っているだろうか?
簡単に説明するとこういう構図だ:石炭を燃やす→CO2排出→人為的な気候変動 (→地球の滅亡??)
何を隠そう、環境にとって石炭は最悪だ。
***
というわけで、気付けば僕はハラムと呼ばれる炭鉱へ向かうでこぼこ道のバスの中で、携帯を使い炭坑の写真を見ていた。ハラム炭坑への訪問は、この4日間のイベントの最初のハイライトであった。
炭鉱見学の前日、キャンプのファシリテーター達は石炭採掘がクアンニン省にもたらしている影響や、彼らがベトナムでこれ以上石炭火力発電所が建設されないよう願っていること、そしてこの野心的な願いを実現するにあたりキャンプ参加者がどのような役割を担えるかについて、長い時間を費やして語ってくれた。
現実的に考えて、炭鉱を訪れた若者たちが現状を変えるために一体なにができるだろうか、とその時僕は疑問を感じていた。
しかし、ハラム炭鉱がやっと目に入った瞬間そんな疑問も吹き飛んだ。
その風景を前にして、僕は燃えるような怒りしか感じなかった。
iPhoneの画面越しに受動的に見る「バーチャル」なものと、自らの目で実際に見る「リアル」な人為的な破壊の風景は、全くもって異なる。でこぼこ道を走っていたバスの中がシーンと静まり返ったのをよく覚えている。一瞬時が止まり、遠足のようにワイワイと盛り上がっていたEACLCの参加者はみんな黙り込み、バスの車内を静寂が支配した。みんな窓側に集まり、かつては山の麓であっただろう大きな穴をただ眺めていた。
見学の付き添いで来ていた地方政府の観光課の方は、私たち参加者を単なる観光客だと思い込んでいたようで、彼女は誇らしげに、炭鉱をつくる際の爆発で出る岩や土を別の山頂に持って行き、そこに植林することで環境に配慮した炭坑業に専念している、と語った。
完璧な開拓。
自然を回復させるのは簡単。
資源採掘は持続可能!
この女性は、自分が何を言っているのか理解しているのだろうか、と私は彼女の口から出る言葉に耳を疑った。しかし、きっと彼女自身、ずっとこの情報しか聞かされてこなかったのだろう。人は環境の産物と言うが、周りの影響でこうした思い込みが生まれてしまうことも、仕方がないことだろう。
運転手がバスを停止させて、私たちはみんな心に重さを感じつつバスを降りた。
炭鉱に興味を持ったニセ環境客を装いながらおどおどと現場に入り、見学者用の炭鉱労働者の作業着に似せたものを着させられ、ツアーが始まった。政府職員は炭鉱労働者用の素晴らしいシャワールームや食堂、炭鉱内の万全の安全対策システム、完璧な健康対策、採掘のための最新鋭のシステムなどを誇らしげな様子で紹介した。
彼らが発信しようとしているメッセージはとても前向きなものだ。これらを見た限りだと、炭鉱労働者にとっては万事うまくいっているのだろうと思えた。しかし、結局労働者個人の意見を聞くことはできないまま見学は終わってしまった。唯一できたのが、小綺麗な食堂で労働者にお礼の品を渡しながら行った、笑顔に満ちた写真撮影だ。それを最後に、私たちはおいそれと次のバンダン炭鉱へと向かわされた。
最初に感じた怒りは残っていたが、帰りのバスが採掘場の大きな穴の横を通ったとき、その感情はどことなく静まった。…
[アクション情報] 11/14 ストップ石炭投融資 / アクションデー #StopFundingFossils
ストップ!石炭投融資・アクションデー #StopFundingFossils
2015年11月14日
米国、フランス、イギリスそして中国でさえも石炭への投融資撤退または厳しい制限を設けるということを国として表明しています。そんな、石炭投融資撤退への傾向が進む最中、日本政府はまだ留まったままです。
「グローバル・デイ・オブ・アクション」に因んで日本のリーダーに向けて#StopFundingFossils (化石燃料への投融資を止めよう) と呼びかけるアクションがアジアの国々の日本大使館前などの様々な場所で11月13日から11月14日の間行われます。11月15日-16日に行われるG20サミットと、経済協力開発機構(OECD)の輸出信用に関する会議の直前、そしてパリで開催される国連気候変動会議(COP21)の前にアクション起こすことは海外の石炭関連事業への支援に制限をかける交渉を影響するために非常に重要です。
350.org JAPANは、11月14日午前10時より、石炭産業への公的支援を廃止するように日本政府へ訴えるため、直径4メートルの巨大な「カーボン・バブル」オブジェを使用したフォトアクションを国際協力銀行前で決行します。
「カーボン・バブル」とは今後地球温暖化規制強化によって、化石燃料エネルギー関連の開発ができなくなった場合、そのような投資が過剰投資となりうるリスクのことを指します。2007年より2014年の間、日本は200億米ドル(約2兆4300億円)をも超える石炭関連プロジェクトへの投融資を行っており、石炭開発において世界で一番の投資国になっています。先日、国際環境団体オイルチェンジインターナショナルおよび世界自然保護基金によって発表された調査結果では「日本の輸出信用機関を通して支援を受け、稼働している9つの石炭火力発電所が起こす大気汚染は2015年に540億米ドル(約6兆6700億円)もの健康被害を発電所周りに住む住民へ及ぼした」と記載されています。
日本政府が石炭投融資撤退の道へと進まない限り、世界の舞台よりさらに遅れを取ってしまいます。
日本およびアジア各国でのアクションへ参加してくださる方を募集しています。イベント詳細およびSNS上での参加方法は下記の通りです。
日時:11月14日(土)午前10:00 KKRホテル東京前の東西線「竹橋駅」出口集合
アクション場所:国際協力銀行前
アクション内容:直径4メートルの巨大「カーボン・バブル」風船を持ち上げ、マスクを付けながら「ストップ!石炭!」などと書かれたバナーを掲げて撮影。撮影した写真を#StopFundingFossils というタグおよび「気候を守るために、日本は石炭開発への公的支援を止めるべきだ」などメッセージをつけて、みんなでツィッターやフェイスブック、SNSを通じて拡散。写真は直接こちらのメールアドレス([email protected])へ送っていただくと、この共通アルバムにアップされます。
<<SNSでの参加方法>>…
フィリピン南西部パラワン島住民による抵抗運動 石炭大手を上回る力に
フィリピン南西部のパラワン島では、建設予定の石炭火力発電所に対する反対運動が起こっており、先週極めて重要な局面を迎えました。 6月16日に、パラワン島のプエルト・プリンセサ市議会は、「パラワン島における石炭火力発電所の建設に猛反対する決議」を採択しました。
市議会がこれ以上ないほど強力な反対の言葉を表明したことで、破壊的で不要な石炭火力発電所の建設阻止を求めた闘いは、大きな転換点を迎えました。 当初はごく一部の市民が始めたキャンペーンでしたが、今や教会、大学、農家、地域、市民団体を通じ、国会だけでなくフィリピン中に広がっています。
パラワン島には、人間活動の影響を受けやすい繊細な生態系が広がっています。この地で、フィリピンの建設会社DM Consunji Incorporated(DMCI)は、過去にも何度か発電容量15MWの石炭火力発電所建設を強行的に行おうとしてきましたが、いずれも失敗に終わっています。 パラワン島の人々は、環境破壊や人権侵害に関与してきた ことで知られる企業が、私たちに残された「生態系の最後の砦」を破壊するのを、見過ごすわけにはいかなかったのです。
「闘いはまだ終わっていません。 ですが、このような瞬間、私たちの恐れは希望に変わります。 私たちの活動の意義が認められたのです! 想像した以上に、私たちの心の中に大きな勇気があることに気がつきました。」
~ クリーンエンルギーを求めるパラワン連盟代表Cynthia Sumagaysay- Del Rosario
私たちは、同省のRamon Jesus P. Paje長官宛に、フィリピン各地からDMCI社による建設計画の撤回を呼びかける署名を、およそ6,000人分集めました。 プエルト・プリンセサ市議会が採択した決議は、以下の4点を明確に指摘してます。
1.建設候補地に暮らす住民との間で適切な協議が行われなかった
2.十分な情報提供のもとでの市民参加がなかった
3.極めて希少な海洋および陸上生物の生存に直接的な脅威となる
4.パラワン島に暮らす数部族の先住民たちの生命や暮らしに影響を与える ぜひ、私たちと一緒に声を上げてください — ご署名の上、請願書をシェアしてください!
脱石炭を掲げるパラワン島の動きは、 島の人々だけでなく、フィリピン全体にとって非常に重要な運動です。 再生可能エネルギーに関して、費用面でも現実的な政策提言が可能で、 実際、パラワン島のエネルギー基本計画は、再生可能エネルギーが最も安価で入手しやすく、賢明なエネルギー解決策であることを明らかにするでしょう。 今私たちがすべきは、市民生活の中でこれらの政策を実現するため、脱石炭ムーブメントの力を発揮することです。 …