地球温暖化対策の新枠組み「パリ協定」の署名式が、4月にニューヨークの国連本部で行われました。5月下旬に三重県の伊勢志摩で開催されたG7サミットはそれに続く、最も大きな国際的なイベントだったにも関わらず、地球温暖化や気候変動問題に対する取り組みへの進展はありませんでした。日本は世界をリードする機会を逃してしまったと言っても良いでしょう。

日本の国内外での石炭開発や石炭火力発電所への多額の投融資を明らかにし、日本の機関投資家に化石燃料への投資を止めるように呼びかけるため、350.org JapanはG7サミットの直前に合わせてSTOP!石炭投資アクションを行いました。  

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国内でも国外でもあまり知られていませんが、日本は世界で一番石炭への公的支援を行っている国です。 米国のNRDC をはじめとするNGO団体が発表したG7国家による石炭出資額に関するの新たな報告書によると、日本は2007年から2015年の間に海外の石炭火力発電所と石炭開発に 220億ドル以上の出資を行いました。これはなんと、G7国家による石炭への公的支援総額の52%にのぼります。

NRDC

上のグラフが示す通り、日本はG7内ではずばぬけて多額な公的支援を石炭関連事業へと注いでいます。

さらに知られていないのが、銀行などの日本の民間金融機関が世界中の石炭および化石燃料関連企業に巨額の資金を注ぎ込んでいることです。 昨年、350.org Japanが行った調査では、2014年に日本の民間銀行および保険会社が国内の石炭関連企業に対し、5兆円(約450億米ドル)の投融資を行っていたことが明らかになりました。

また、日本は現在国内に47基もの新たな石炭火力発電所の建造を計画しています。地球温暖化、公衆衛生、そして日本の経済にとってこれは絶望的な知らせです。ハーバード大学およびグリーンピースによる最新の報告書によると、これらの新たな発電所の稼働期間中に少なくとも1万人もの若年死亡者が出るおそれがあることが分かりました。 また、オックスフォード大学の研究では日本の火力発電所は新旧問わず800億米ドルに相当する座礁資産となる可能性があることが明らかになりました。

世界は再生可能エネルギー中心の電力供給体制へ向かっているにも関わらず、なぜ日本はまだ化石燃料への投資を続けているのでしょうか?

2011年3月11日の東日本大震災によって福島原発がメルトダウンを起こし、それは原発に対する大規模な反対運動に繋がりました。それ以降、日本は化石燃料、特に石炭への依存度を高めてきました。

しかし、原子力エネルギーの代替として化石燃料の使用量を増やすことは、日本がパリ協定に基づく責任を果たさないということを意味します。そしてさらに持続可能な道から離れ、他の先進国から孤立してしまいます。

日本の地球温暖化政策への不十分さと、今なお続いている原子力災害を踏まえ、私達は100%再生可能エネルギー社会への転換を促進するために化石燃料および原子力への投資撤退を運動を推し進めています。  


CoalJapan_Logo

#cooljapan それとも #coaljapan ?

5月19日(木)、20日からのG7財務大臣会合を留意し、財務省の前で麻生太郎財務大臣に日本の石炭事業への新規融資の即時に終わらせること、そして再生可能エネルギー投資への切り替えを求めるメッセージを伝えるためのアクションを行いました。 経産省が推進している「Cool Japan」をもじって、350.org Japanメンバーは、麻生太郎財務大臣に扮したイアンと共に、「Coal Japan」と書かれたタスキを身に着け、「クリーン」で「安い」 石炭を出勤中の通行人に配りました。 このアクションの一環としてCOAL JAPANのウェブサイトも立ち上げ、ハフィントンポストにもブログがアップされました。

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配布物には石炭の小さな塊と石炭が「クール」でも「クリーン」でもない理由が書かれたチラシが含まれていました。

19日の2回目のアクションでは、他の環境団体と連携しながら、インドネシアのバタン、そしてインドのダリパリで進められている石炭火力発電プロジェクトへの投資に反対するために世界最大の石炭事業への公的支援機関である国際協力銀行(JBIC)の前に集まりました。 どちらのプロジェクトでも土地の収奪や人権侵害が蔓延していると現地より報道されています。

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JBIC本部前に集まった350.org Japan、Friends of the Earth Japan、およびJapan Center for a Sustainable Environment and Societyのメンバーたち

また、世界の80もの環境保護団体と共同で、財務省およびJBICの双方にG7サミット中に日本政府が化石燃料へのすべての投融資を停止し、再生可能エネルギーへの投資に即時切り替えることを示した公式声明を発表することを要求する国際請願書を提出しました。このアクションに関する記事がブルームバーグに掲載されました。(英文)

5月23日には、国際エネルギー機関(IEA)主催の高効率低排出(HELE)石炭火力発電所に関するワークショップ会場の前で「クリーンコール大賞」という模擬の表彰式を執り行いました。 クリーンな石炭は全くクリーンでないという事実を強調するために、イギリスの研究機関E3Gが発表したG7 石炭スコアカードレポートで最低評価だった、日本の安倍晋三総理とドイツのアンゲラ・メルケル独首相に「IEA クリーンコール大賞」を贈りました。

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「クリーンコール大賞」の表彰式では安倍総理とメルケル首相を石炭キングとクイーンと賞しました

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石炭サンプルをワークショップ参加者に配布する350.org Japanチームとボランティア

しかし、G7直後に私たちは悲報に見舞われました。6月3日、国際協力銀行(JBIC)がインドネシアのバタン石炭火力発電事業を対象に約20億5,200万ドル(約2,234億円)の融資を決定しました。株式会社三井住友銀行、株式会社三菱東京UFJ銀行、株式会社みずほ銀行、三井住友信託銀行株式会社、三菱UFJ信託銀行株式会社、株式会社新生銀行、農林中央金庫などの民間金融機関も協調融資を行うと表明しています。

金融機関が融資を行うプロジェクトが社会的責任を果たし、健全な環境管理方法に従って進行することを確実にするために策定されたエクエーター原則(赤道原則)をこれらの金融機関は採択しています。現地住民の声、そしてこのプロジェクトがもたらしている人権侵害や環境への影響を無視して押し切られたこの融資はエクエーター原則に反しています。

350.org Japanはこの融資決定に強く反対し、日本の石炭への投融資を止め、#DivestJapan キャンペーンを拡大させるためにより一層努力をします。 私たちは日本の機関投資家達に下記のことを促していきます:

  • 化石燃料および原子力エネルギーへの投資額を開示すること
  • これらの企業への新たな投融資を凍結すること
  • 地球の気温上昇を1.5〜2度未満に抑えることを目標に、持続可能な開発を支える企業への投融資を優先させる方針を策定し、公表すること
  • 2020年の東京オリンピックまでに化石燃料および原子力関連企業への投融資を完全に引きあげること

ぜひダイベストメント声明に署名し、私たちの活動を支援して下さい。次のイベントまでお待ちしております!

350.org Japan チーム